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対人援助のお勉強ブログ 2010年7月

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2010年07月29日(水)

全体を眺める
 昨日、某地域包括支援センターの職員研修で思ったこと・・・・

 自分自身の位置、他者への影響も含めて客観的に眺める。これほど難しいことはないかもしれません。援助者といえども生身の人間ですから、クライエントに何らかの感情を抱きます。でも客観的に眺めなければいけない。
 妻であるご本人に話を聴いたときに、ご本人は、夫に対する、息子に対する「申し訳ない」気持ちを表現され、号泣された。その様子を目の当たりにし、援助者としての私は「この人の力になりたい」と強く思った。
 夫は、生活のほとんどの部分で介護を要する。妻は自分で介護をしたい。駆け落ち同然でこの街にやってきて、誰にも頼らず、いや頼ることができず、2人で頑張ってきた。だからこそ、自分で介護をしたい。しかし、介護をするとイライラする。抵抗できない夫を叩いてしまう。そんな葛藤を抱えながらも、今まで妻は援助者である私にも頼ろうとしなかった。そんな妻が初めて気持ちを吐露し、号泣した。私は、妻が気になって仕方がない。何とかしてやりたくて仕方がない。

 あなたはこんな経験ないですか?こんなとき、なかなか客観的にケースを眺めることはできません。「のめり込んでいるのはないか・・・」ある程度は気づいているのですが、何とかしてやりたい気持ちが強すぎる。
 こんな状況でケース全体を眺めることは難しいですよね。そんなとき、全体を客観的に眺めるというとはどういうことかを考えてほしいのです。 



2010年07月27日(月)

研修に施設長が出席すること
 一昨日の夜から、鳥取県の倉吉に来ています。昨日は、鳥取県の認知症介護実践リーダー研修初日でした。5日間あるようです。
 ボクは、「スーパービジョン」についての講義と演習を行いました。初日の午前中は、受講者以外に、受講者が所属する施設の施設長の出席が義務づけられていました。各県でこの研修は実施されていますが、施設長出席の義務づけは、鳥取県独自の取り組みだそうです。
 スーパービジョンを行うに当たっては、施設長、あるいは管理者の理解がどうしても求められます。スーパービジョンと記録書きは、ともすれば時間外に押しやられるという現状があります。勤務時間内にやるためには、施設の日課や職員のシフトそのものを考え直す必要も出て来ます。スーパービジョンの時間を確保するためには、また、スーパーバイザーの役割を担う人が「スーパービジョンが自分の職務である」ことを意識し、学習を続けながら実践するに当たっては、組織的な取り組みは欠かせません。
 ですから、施設長がその必要性をご理解いただくために、研修への施設の出席は、たいへんすばらしいことだと思います。他県でも鳥取県を見習ってほしいものです。施設長は、リーダー職員のスーパーバイザーでもあるわけですし、施設長自らが、リーダー職員に対してスーパービジョンのお手本を示す。そして、リーダー職員は、施設長にしてもらったように、部下たちにスーパービジョンを行う。こうした体制ができあがることで、職員や組織は当然活性化するでしょうし、リスクマネジメントや人材活用が自ずとシステム化されるように思います。
 ただし、施設長が行うスーパービジョンの中味が問われますが・・・・・ 



2010年07月25日(日)

合同フォローアップ研修会
 ずいぶんたくさんの人が、「お勉強ブログが終わったんですね、残念です・・・」と言ってくださいました。たいへん光栄です。ありがとうございました。

 趣向を変えてお勉強ブログを再開いたします。

 昨日と今日は、「スーパーバイザー養成研修合同フォローアップ研修会」なるものをやってました。
 ボクは、2004年度から、大阪市を皮切りに、大阪府、京都府、奈良県、山口県など7カ所で、「スーパーバイザー養成研修」をやってきました。ボクが一人で把握できる20人以内の定員で、半年かけて行う研修です。数時間でスーパービジョンの基本的なことを勉強する研修ではなく、実際に職場に帰ってスーパービジョンを実践し、その報告を研修の場で行い、受講者同士でスーパービジョンをし合う。その繰り返しを半年かけて行うというものです。
 その研修の修了者が350人を超えました。3年前から修了者を対象に合同でフォローアップ研修をやってます。一昨年は京都、昨年は大阪、そして今年は奈良で行いました。総勢約60人の参加がありました。遠くは山口県からもお一人の出席がありました。

 さて内容ですが、まず、基調講演として、社会医療法人大道会の高落敬子氏から、「組織で取り組むスーパービジョン」と題してお話をいただきました。たいへん具体的なお話で、組織としての仕組み作りだけではなく、管理者が職員にどのようにかかわるのか・・・ボクの感想としては、管理者も含む「組織の専門性」が「個人の専門性」を支え、補強し高めていくという、最近あちこちで訴え続けていることを裏付けしてくださって、大変心強く思いました。また、多くの参加者の方々が刺激を受け、元気をもらえたと喜んでくださいました。
 次に、シンポジウムを行いました。社会福祉法人萌ひなた舎の山口健一氏、大萩茗荷村の仲本耕児氏、社会福祉法人白寿会の種継敦氏にシンポジストをお願いしました。3人3様の報告でしたが、仲良しグループではなく質の高い「プロ」「専門職」の集団を作って行きたい、職員集団のグループダイナミクスを効果的に促すためにも個別のスーパービジョンをしっかりやる、行政や国の仕組みが求めることを職員に上から強要するのではなく、その職員にとってどうなのかということを考えていく・・・これらはほんの一例ですが、つい忘れやすい、つい横に置いてしまいやすい大切なことを、具体的な実践としてやっているという報告をいただきました。また、その実践の基礎となっている考え方を聞くことができました。その後、参加者の方々と意見交換を行いました。ホントにレベルの高いシンポジウムになりました。
 2日目の今日は、3つの分科会に分かれて、実践報告会を行いました。ボクは身が1つなので、すべての会場のすべての報告を聞くことができたわけではありませんが、聞かせていただいた範囲、また資料を読ませていただいた感想としては、「とにかく多くの実践事例に触れることが大切なんだ」ということでした。皆さん、それぞれの職場で努力をされていますが、うまくいかないまま放置している状態になっていたり、どうしたらよいかわからず、ストレスを溜め込んでいったり・・・ということが見られます。立場が違う、目の付け所も違う、スーパービジョンを行うに当たっての状況も違う。だから、多くの実践事例に触れると、自分では考えも及ばなかったことに気づくのです。このことによって、職場に帰って「さあやるぞ!」と元気をもらい、活力になります。
 2日間の研修は、本当に充実したものでした。基調講演をしてくださった高落さん、シンポジスト方々、実践報告をしていただいた方々、「職場に帰ったら頑張るぞ!」という空気を作り出してくださった参加者の皆さん、そして、今回の研修会の企画運営を率先してしてくださった実行委員のみなさま、本当にありがとうございました。そして、お疲れさまでした。



2010年07月19日 (月)

最後に・・・・・
 一日の仕事が終わったら、後輩や部下に、「お疲れさま!今日も一日よく頑張ったね」と声をかけてあげましょう。先輩や上司には、「お疲れさまでした。今日も一日ありがとうございました」と声をかけましょう。それが、患者さんや利用者さん、生徒さんに声をかける練習になります。そして、あなた個人の、あなたが属している組織の「対人援助の専門性」を高めるきっかけになるのです。なぜなら、対人援助の専門性は、「相手を大切にしようとすることから始まる専門性」だからです。

 3ヶ月に渡って書いてきた一連のブログは、今日をもって終わりにしたいと思います。今までの内容を、具体的な3つの事例(介護、看護、保育分野からそれぞれ1事例)を通して展開させ、10月頃に出版する予定になっています。
 新しい本の趣旨を改めて整理すると、「対人援助職の燃え尽きは、専門性を向上させることによってかなりの部分防ぐことができる。専門性は、もちろん一人ひとりの対人援助職に帰属するものだが、組織としての専門性は、それを補い、向上させるものである」ということです。対人援助の専門性は、あなた個人の専門性と組織の専門性が相乗作用を起こし、高まったり、低下したりするのです。どちらの専門性も同時一体的に見ていかないといけない。そう思います。

 これで一連のブログは終わりますが、今後はペースを落とし、いろいろな質問に答えて行きたいと思っています。



2010年07月18日(日)

日々の訓練
 また、あなたが、初めて対人援助職に就いた頃のことも思い出してみてください。初めて出勤した日、あなたはずいぶん緊張していたでしょうね。この人たちとうまくやっていけるだろうか・・・。患者さんや利用者さん、生徒さん、それに、職員さんたちとの関係に、何ともいえない不安を抱いていました。
 と同時に、「よーし、今日から頑張るぞ!」。並々ならぬ意欲もあったのではないでしょうか。大学や専門学校を卒業したばかり、あるいは、卒業してあまり年月が経っていない。あるいは、介護職の場合は、専門的な勉強をせずに、就職した方もおられることと思います。ですから、専門職としてはまだまだ未熟でした。未熟ではありながら、初めて就いた対人援助職です。意欲的に仕事に取り組まれた方は多いと思います。
 その後、あなたは、今日までどのような勉強や訓練をしてこられましたか。新人の頃は、先輩たちから教えてもらう研修プログラムがあった・・・。でも今は、一年に一回ぐらい、外部の研修に行かせてもらっている程度・・・。なんて方は多いかもしれません。
 一日十分程度でかまいません。仕事が終わったら、今まで書いたブログを眺めながら、今日一日を振り返ってみてください。これは、日々の訓練、継続することが大切です。専門職には欠かせない日々の訓練なのです。



2010年07月17日(土)

対人援助職に就こうとした動機
 さて、リラックスして、あなたが対人援助職に就こうとした動機を思い出してみてください。お母さんがおばあちゃんのお世話を一生懸命されている後ろ姿を見て育ったから、自分も介護の仕事をしたいと思うようになった・・・。小学生の頃、けがで入院したとき、看護師さんに優しくしてもらい、すばらしい仕事だと思った・・・。幼いときに親戚のお姉ちゃんによくお世話してもらったように、近所の子どもたちのお世話をしているうちに、保育士になりたいと思うようになった・・・。中学生のときの担任の先生がとても好きだったことがきっかけで、教師という職業にあこがれるようになった・・・。
 近頃は、動機なんて思い出さなくなりましたね。あまりにも忙しかったのかもしれません。精神的にきつかったのかもしれません。ゆとりがないと思い出しません。
 でも、専門性を高めるためには、ときどき思い出してみてほしいのです。忙しいときほど、精神的にきついときほど、あえて思い出してみてほしいのです。日々の訓練の一環だと思ってもかまいません。動機を思い出すと、あなたの新鮮な気持ちがよみがえってきます。



2010年07月16日(金)

個人の専門性と組織の専門性の相乗作用
 ここまでお読みいただきありがとうございました。「専門性を高めることによってしんどくなることを防ごう」といったテーマで書き綴ってきました。あなた個人の専門性、さらには組織の専門性について、細かく書いて来ました。「専門性」ですから、少々堅苦しいところもあったと思います。「これは難しい」というところもあったと思います。ただ、以前にも書きましたが、いきなり100点満点の対人援助職なんていません。ひょっとしたら、いくら頑張っても100点満点を取れないかもしれません。そんな仕事なのです。30点の人は40点をめざしたらいい。60点の人は70点をめざしたらいい。そして、最終的に80点ぐらいでよいのです。
 あなたの足らないところは、上司や仲間、組織が補ってくれる。そして、あなたは、仲間の足らないところを補う。それは、組織ぐるみでお互いに支え高め合うという「組織としての専門性」を発揮することなのです。個人の専門性と組織の専門性は、よくも悪くも相乗作用を起こします。ここまで書いてきたことを活用して、ぜひよい相乗作用を起こしてほしいものです。



2010年07月15日(木)

毎月15日もノーお勉強デー・・・・・ちょっとブレイク(^^)
 もうすぐ、このホームページを立ち上げて3ヶ月。お勉強ブログは毎日更新してきました。ときどき、ご意見やご質問、ご要望もお聞きしました。
 ある教え子は、「お勉強ばかりじゃなくて、普通のブログも書いて!」と言ってくれました。このブログは、たいがい一日の仕事を終えてホッと一息つき、焼酎を飲みながら更新しているもので、普通のブログ、例えば日記なんかを書くと、酒の勢いで何を書いてしまうかかわからない・・・という怖さがあります。だから、日記は書かないと固く心に決めたのです。
 講演や研修で、いろいろとご質問をいただきます。ほんの少しこのブログでもお答えしましたが、とりあえず、一通り、ボクの書きたいことを書いてしまおう。その後で、ご質問にお答えしよう。そう思って、今まであまりご質問にはお答えしてきませんでした。今後に期待してください。
 「○○について書いてください」と、ご要望もいただいております。それもおいおい書いていきたいと思っています。
 うれしいお話も聞きました。このブログをプリントアウトし、自分の部下たちにコピーをして配ってくださってる方がおられます。

 ずいぶん迷って始めたお勉強ブログ。なぜ迷ったかというと、僕自身の自己顕示欲が強く現れないか・・・そんな不安があったのです。でも、フリーで「植田寿之ブランド」で仕事をしてみようとしているわけですから、自己顕示欲もないことにはいけない。そう思い、納得して始めてみました。
 まもなく、今まで書いてきたシリーズを終えることにします。そのあとは、違った形でお勉強ブログを再開いたします。 



2010年07月14日(水)

組織としての専門性
 そもそも「専門性」は、個人に帰属するものです。ですから、あなたをはじめ一人ひとりの対人援助職が専門性を身につけることが重要視されます。しかし、患者さんや利用者さん、生徒さんとの援助関係作りには、チームや組織の中の職員間の人間関係が大きな影響を及ぼすことがわかりました。
 好ましい連鎖を起こすためにも、好ましくない連鎖を防ぐためにも、組織ぐるみで、また、仲間とともに、どうすればよいかを考えていきたいものです。そのためには、スーパービジョン体制を構築することが有効でした。スーパービジョン体制を構築するためには、あなただけではなく、チームや組織の人たち全員が、スーパービジョンについて理解し、必要性を認識する必要があります。
 そう考えると、対人援助は、組織ぐるみで行うものなのです。つまり、「組織としての専門性」を高め、発揮することが大切になるということです。



2010年07月13日(火)

今のあなたにできること
 そのために、今のあなたにできることは何でしょうか。あなたが置かれている立場や状況によって違うと思います。ヒントになればと思いますので、いくつかのパターンを紹介しておくことにします。
 あなたに後輩や部下がいるならば、後輩や部下が悩んでいたら、率先して相談に乗ってあげましょう。ひょっとしたら、何らかの事情があり、後輩や部下の方からあなたに声をかけにくいかもしれません。ですから、日頃から、できれば毎日のように、後輩や部下の業務時間が終われば、「今日はどうだった?」と声をかけるのです。何かがあった日でもなかった日でもです。そうしたちょっとした話を聴く時間を、例え五分でも習慣として作るということが大切です。そのちょっとした時間の中で、後輩や部下が今考えていることや悩んでいることを把握して、一緒に考えるのです。
 あなたが新人ならば、先輩や上司に上手に甘えてみてください。「このことについて困っているのでアドバイスをください」でもかまいませんし、「一緒に考えていただけませんか」でもかまいません。素直に穏やかに助けてほしい気持ちを表現すれば、先輩や上司は必ず相談に乗ってくださるはずです。
 あなたが、先輩や上司に相談しにくいのであれば、仲間や同僚に相談してみてください。また、可能であるならば、今まで書いてきた「スーパービジョンとは何か」や「スーパービジョンの有効性」を説明して、お互いに相談し合える時間を定期的に確保するようにもちかけてみましょう。あなたが、そうした体制を作る仕掛け人になるのです。あなたの職場や部署が、あなた一人である場合は、他の職場や他の部署のあなたと同じような立場の人たちに働きかけます。
 あなたが、中間的な立場であるならば、スーパービジョン体制を作りやすい位置にいると思います。まず、スーパービジョン体制の必要性や有効性を整理します。次に、あなたの職場におけるスーパービジョン体制の全体像を図式化、あるいは文章化し、管理者に説明します。管理者に理解してもらったら、職員会議で職員全員に説明します。そして、部署ごとに分かれ、どのようにすればよいかを状況に応じて具体的に考えます。
 どの方法をとっても、すぐに理想的なスーパービジョン体制が築けるわけではありません。時間がかかると思います。いずれにしても、まずは、「スーパービジョンとは何か」、「スーパービジョンの有効性」を職員全員が理解できるように、少しずつ段階を追って何らかの方策をとりたいものです。



2010年07月12日(月)

限界の中で最善を尽くす
 とはいっても、そんなに簡単に、よいスーパービジョン関係が築けるわけではありません。あなたは、今まで書いてきた組織としての取り組みを読んで、「うちの組織では無理」と思われたかもしれません。「あの上司が私を育ててくれるなんて・・・」、「あんな同僚になんて相談したくない・・・」。いろいろな思いが交錯しているかもしれません。
 でも、考えてみれば、誰でも気持ちよく仕事したいものです。ストレスを溜め込みたくありません。燃え尽きたくありません。これが、あなたや上司や仲間の共通する思いです。
 この共通する思いをみんなで共有しませんか・・・。
 どんな組織であろうが、どんなチームであろうが、限界はすぐ目の前にあります。例え職員が2人増えたって、例え給料が2万円増えたって、例え休みが2日増えたって、すぐに限界がやってくるのです。大切なことは限界の中で最善をつくすこと。
 あなたが感じている限界、上司が感じている限界、仲間が感じている限界は、立場が違いますので、それぞれ違うかもしれません。それぞれ違う限界を、顔をつき合わせて出し合うのです。共有するのです。そして、それぞれの立場で感じる限界の中で最善をつくす方法を一緒に考えるのです。
 これができれば、スーパービジョン体制を整えることに直結します。スーパービジョン体制とは、チームや組織の各層でスーパービジョンが行われる体制です。もう少し詳しく説明すると、下位の職員は上位の職員のスーパービジョンを受ける。さらに、同じ階層でも仲間同士でスーパービジョンを行う。さらに、組織を超えても、一緒に仕事を行うチームでスーパービジョンを行う。そういう体制のことです。それは、組織として対人援助を行い、組織としての専門性を育てることになります。その過程の一つが、限界を共有し、限界の中で最善を尽くす方法をみんなで一緒に考えるということなのです。



2010年07月11日(日)

スーパービジョン関係形成の重要性(2)
 逆に、あなたが、患者さんや利用者さん、生徒さんへのかかわりや援助関係で悩んでいるとき、身近にいる上司が、以前書いた話を聴く専門技術や援助の態度で接してくださったらどうでしょう。たちまちあなたは、力を回復します。そして、再び困難と向き合うことができるようになります。好ましい連鎖が起こり、上司から身をもって学んだ専門性を発揮して、あなたは相手とのよい援助関係を取りもどすことができます。
 ですから、スーパーバイザーである上司は、対人援助の専門性をスーパーバイジーであるあなたに対しても発揮する必要があるのです。
 同じようなことが、仲間で行うピアスーパービジョンにもいえます。仲間との関係の前提は、やはり「人」と「人」との関係。仲間同士でお互いに対人援助の専門性を発揮し合い、よいスーパービジョン関係を築いていきます。そのことによって好ましい連鎖が起こり、あなたをはじめ、それぞれのメンバーが、担当する患者さんや利用者さん、生徒さんとのよい援助関係を取りもどすことができるのです。
 あなた一人では克服しにくい問題の克服にも、好ましい連鎖を起こすよいスーパービジョン関係を作ることが有効です。上司や仲間にしっかり受け止めてもらうことによって、「わかっているのにできない」という専門性を高める過程での苦しみも緩和されるでしょう。この段階では何ができるかを教えてもらうこともできるでしょう。自己覚知の入り口に立ち、嫌な自分情けない自分を見つけてしまったときも、上司や仲間があなたを守ってくれるでしょう。相手にのめり込んだとしても、仲間や上司が客観的な目で適切なアドバイスをくれるでしょう。



2010年07月10日(土)

スーパービジョン関係形成の重要性
 スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係を「スーパービジョン関係」といいます。セルフスーパービジョンの場合は、あなた一人で行う形態ですから例外ですが、その他の形態で行う場合は、このスーパービジョン関係が大きな鍵を握ります。スーパービジョンを行う上で、最も重要な要素だといっても過言ではありません。
 あなたと同じ専門職である上司がスーパーバイザーを担う場合、その上司は、あなたより専門性という点で優位な立場にあるでしょう。また、上司ですから組織管理上も優位な立場にあるでしょう。しかし、「人」と「人」との関係が、その前提として存在するのです。それは、あなたと相手との関係である援助関係と同じです。そこには、第三章で示したお互いの支え合いという原点が存在するし、無意識のつながり、すなわち関係性という本質も存在します。
 専門性という点でも組織管理上においても優位な立場にあるからといって、上司が、その優位さを振りかざしたらどうでしょう。あなたは萎縮します。その振りかざし方が、あなたにとって理不尽なものであれば、腹も立ちます。萎縮すれば、上司に対して何も言えなくなります。腹が立てば、上司との関係そのものがつらくなります。さらには、好ましくない連鎖で、患者さんや利用者さん、生徒さんとの援助関係にも悪影響を及ぼし、それこそ、あなたは燃え尽きてしまいます。



2010年07月09日(金)

スーパービジョンの形態・・・セルフスーパービジョン
 自分自身で行うスーパービジョンの形態を「セルフスーパービジョン」といいます。スーパーバイザーも仲間も存在しないので、スーパービジョンと呼べるかどうか議論の余地があります。ですが、この形をスーパービジョンと呼ぶ研究者が増えています。いずれにしても、スーパーバイザーが存在しない状況では、有効な形には違いありません。
 具体的にどのように行うのか、一例を挙げておくことにします。例えば、あなたが、仕事で困難な出来事に出くわしたときに、詳しく記録を書いておくのです。あるいは、日記のように記しておくのです。どのような出来事があったのか、そのときあなたはどのような気持ちになったのか、その気持ちにしたがってどのような行動をとったのか、その結果どうなったのか・・・といった内容です。それを次の日など、少し時間をおいてもう一度読んでみるのです。そこには、昨日の自分が記されてあります。昨日の自分に今日の自分がスーパービジョンを行うのです。
 これをボクは勝手に「日記の原理」と呼んでいます。あなたは、昔日記を書いていた時期がありませんか。今も書いておられるかもしれません。昔の日記を持ち出して、一度読んでみてください。そこには過去の自分が記されています。それを今の自分が読めば、何かを感じると思います。「お前、それはないだろ・・・」、「今だったら、そうは思わないだろうな・・・」、「未熟だったなあ・・・」。いろいろと感じることがあると思います。セルフスーパービジョンはこの原理の応用です。今の自分が過去の自分にアドバイスをするのです。
 ボクもときどき、この方法をとっていますが、たいへん有効です。自分を冷静に眺めることができるようになります。あなたもぜひ一度試してみてください。



2010年07月08日(木)

スーパービジョンの形態・・・ピアスーパービジョン
 「ピア」とは、仲間や同僚のこと。上下関係のない対等な立場だといえます。スーパーバイザー、あるいは熟練した援助者が存在しない集団で行われます。対等な関係で行うので、親しみやすい雰囲気でスーパービジョンを行うことができます。
 あなたも、仲間や同僚には気兼ねなく相談できるという経験をしたことがあるかもしれません。もちろん相手にもよるのですが、同じような時期に採用され、何かと普段から一緒に行動する機会が多く、気安い関係であれば、お互いに相談しやすいものです。
 ただし、友だちに近いような関係であれば、なおさらピア集団全員が、「スーパービジョン」を理解しておく必要があるでしょう。なぜならば、単なる友だち関係で終わっては、スーパービジョンにならないからです。お互いの成長を意識し、支え合い高め合う必要があるのです。
 福祉の分野では、スーパービジョンがかなり浸透してきたとはいえ、きちんと機能しているとは言い難いのが現状です。また、近年、居宅サービスの事業所などでは、介護支援専門員の一人職場というところも少なくありません。さらには、医療、保育、教育の分野では、ほとんどスーパービジョンが浸透していません。ということは、スーパービジョンをやろうと思っても、スーパーバイザーが存在しない。こうした現状を考えると、職場内、また職場外の仲間で行うピアスーパービジョンが、非常に有効な形だと思われます。



2010年07月07日(水)

スーパービジョンの形態・・・ライブスーパービジョン
 観点を変えてスーパービジョンの形態を考えると、ライブスーパービジョンという形があります。ライブスーパービジョンとは、すなわち時間差のないスーパービジョン。その場で行うということです。
 例えば、あなたが担当している利用者さんの面談をしているといましょう。上司に同席してもらい、その場でスーパービジョンを受けます。あなたが面談に行き詰まれば、上司が代わって面談します。一段落すれば、上司の面談をお手本にして今度はあなたが面談します。
 あなた自身、利用者にどのようにかかわらなければいけないのか、頭ではわかっていても、なかなかそのとおりにできません。ですから、そのつどスーパーバイザーから助言をもらったり、お手本を示してもらうことで、頭の中にある理論と実践が結びつくのです。
 また、次のような場合もあります。あなたが行う利用者さんの面談を録画したり録音したりします。それをあとであなたはスーパーバイザーと一緒に見ながら、あるいは聞きながら、スーパービジョンを受けるのです。
 こうしたライブスーパービジョンでは、一般論ではなく、実際にあなたが行っている対人援助場面に即した具体的なスーパービジョンを受けることができます。



2010年07月06日(火)

スーパービジョンの形態・・・グループスーパービジョン
 スーパーバイザーが、職員の集団に対して行うスーパービジョンをグループスーパービジョンといいます。今まで紹介してきませんでしたが、「グループワーク」という対人援助の専門技術を駆使することになります。
 グループワークとは、集団に生じる不思議な力を活用して、メンバー一人ひとりの成長を図ったり、問題を解決したりする専門技術です。不思議な力とは、メンバー間の相互作用によって生じるもの。あなたも経験したことがあるはずです。
 例えば、友だちの集団を取り上げてみましょう。あるときには、その集団に属していることがとても心地よいと感じる。でも、あるときには、心地悪く、一刻も早く逃れたいと感じる。また、友だち集団で話し合いをしていると、自分の意見が固まっていたはずなのに、グラグラ揺れ出した。また、逆に、自分の意見が固まっていなかったのに、友だちの意見を聞いて固まった、なんてことがありませんか。
 また、スポーツチームを思い起こすとわかりやすいですが、一人ひとりの選手を見れば、そんなに強い選手はいない。でも、チームになるととても強い。逆に、一人ひとりの選手はとても力のある選手なのに、チームになると弱い。あなたは、そんな経験もしたことがあるかもしれません。
 また、一人では恥ずかしくてできないことでも、集団ではできる、ということもあります。
 このように、集団には、メンバー同士の相互作用によって不思議な力が生じるのです。グループスーパービジョンでは、こうした集団の不思議な力を活用して、メンバーにスーパービジョンを行います。
 集団ですから、あなたを含めて職員が複数います。あなたにしてみたら、自分では気づかないことに、他の職員が気づかせてくれる。これが、グループスーパービジョンの最大の有効性です。また、集団ですから効率がいい。個人スーパービジョンでは、時間の確保が大きな課題でしたが、グループスーパービジョンでは、比較的時間を確保しやすいという点でも有効です。
 しかし、課題もあります。一人ひとりの職員の能力や到達度に合わせることができないこと、個人的な悩みを掘り下げることもできにくいということです。

 こうして、個人スーパービジョンとグループスーパービジョンの特徴を整理すると、あなたは、両者はお互いに補い合うことができることに気づいたのではないでしょうか。ですから、両方行うことが理想的なのです。グループスーパービジョンを通して表に現れた個人の問題を個人スーパービジョンで取り扱う。個人スーパービジョンで表現された問題をグループスーパービジョンで取り上げてみるなど、必要に応じて使い分けるということです。



2010年07月05日(月)

スーパービジョンの形態・・・個人スーパービジョン
 スーパーバイザーが、スーパーバイジーとの一対一の面接方式で行うのがこの形態です。個人スーパービジョンでは、スーパーバイザーは、今まで書いてきた話を聴く専門技術や態度を駆使してスーパーバイジーの話を聴きます。その聴き方は、スーパーバイジーである援助者が、患者さんや利用者さん、生徒さんなど相手の話を聴く聴き方のお手本になります。また、関係作りのお手本にもなります。援助者は、スーパーバイザーに話を聴いてもらったように、相手の話を聴き、関係を結んでもらったように、相手との関係を結ぶことができるようになるのです。つまり、スーパーバイザーは、好ましい関係の連鎖を意図的に生じさせることになるのです。
 個人スーパービジョンは、スーパーバイジーの能力や到達度に合わせて行えるという点で非常に有効です。また、スーパーバイジーが相手との関係での悩み、あるいは、自己覚知によって、嫌な自分、情けない自分に気づいたときなど、人生の過程に起因する問題に悩むことがありますが、そうした個人的な悩みに向き合うときなどにも有効です。
 しかし、課題もあります。例えば、中間的な立場の援助者が、主任として10人の部下のスーパービジョンをするとしましょう。一人あたり1週間に1時間程度の時間をとって話を聴く。しかし、現状としてそんな時間がないのです。慢性的に忙しい対人援助の職場です。しかも、まだまだスーパービジョンが業務として定着していない。福祉の分野では、かなりスーパービジョンは浸透しましたが、それでも時間外に押しやられてしまいます。つまり、個人スーパービジョンを行うにあたり、時間の確保が大きな課題になるのです。



2010年07月04日(日)

3つの機能の関連
 6月30日から、スーパービジョンの3つの機能について書いて来ました。あえて分類すると3つになるのですが、実際は、別々に機能しているわけではありません。同時に3つの機能が働いていると考えるのが妥当でしょう。ただ、どの機能に重きが置かれるかは、スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係や、今取り扱っている問題によって違ってきます。
 例えば、スーパーバイザーが管理者で、スーパーバイジーが中間的な立場の職員であれば、管理する機能に重きが置かれるかもしれません。スーパーバイザーとスーパーバイジーが対等な関係の仲間であれば、支え合うということに重きが置かれるかもしれません。スーパーバイザーが主任で、スーパーバイジーが新人である場合、育てる機能に重きが置かれるかもしれません。
 また、スーパーバイジーが、自己覚知の入り口で心の痛みを抱えている場合は、支える機能に重きが置かれるかもしれません。スーパーバイジーが学校で勉強した理論どおりにかかわることができない場合、育てる機能に重きが置かれるかもしれません。スーパーバイジーが与えられた役割を果たしていない場合、管理する機能に重きが置かれるかもしれません。
 しかし、ほとんどの場合は、3つの機能が重なり合ったスーパービジョンが行われます。単純に使い分けすることはできません。



2010年07月03日(土)

スーパービジョンの必要性・・・職場環境を整え援助者を管理する必要性と機能
 あなたをはじめ一人ひとりの職員が、十分に能力を発揮するためには、職場環境を整える必要があります。環境とは、文房具の配分から、人間関係の調整に至るまで、職場においてあなたを取り巻くあらゆるものといえます。特に、それぞれの職員が職場の雰囲気、あるいは上司の態度などに威圧感を感じていないか・・・ということをよく吟味する必要があります。威圧感を感じていれば、上司の顔色をうかがい、上ばかりを見て仕事をすることになります。それは、もはや対人援助ではありません。ですから、最前線の職員が威圧感を感じるような空気を改善する必要があるのです。
 また、一人ひとりの職員がチームや組織から与えられた役割を果たしているか、共有する援助観や方針から逸脱していないかを管理する機能でもあります。役割を果たしていないのであれば、スーパーバイザーは、スーパーバイジーとともに、どのようにすれば役割を果たすことができるのかを一緒に考えます。逸脱していれば、どのようにすれば逸脱しないのかを一緒に考えます。



2010年07月02日(金)

スーパービジョンの必要性・・・援助者を育てる必要性と機能
 支える機能が土台をなすものであるならば、この育てる機能は、スーパービジョンの中核をなす機能といえます。
 あなたをはじめ一人ひとり職員が、今までブログで書いてきたような専門性を身につけるための機能です。スーパーバイザーは、スーパーバイジーの学習の動機付けを高め、対人援助に必要な専門知識、専門技術、また価値観を身につけることができるように育てます。
 決してあなた一人だけで頑張るものではありません。先輩や上司から教えてもらい、また、仲間で高め合うという機能です。



2010年07月01日(木)

毎月1日はノーお勉強デー・・・・・ちょっとブレイク(^^)
 今のマンションに暮らし始めてもうすぐ17年。当時は、マンションの周囲三方が田んぼでした。奈良の田植えは6月。田植えが終わるこの季節になると、それはたいそうな音量のカエルの鳴き声が聞こえていました。今は、周囲に建物や駐車場ができ、田んぼが少し遠のきました。でも、音量は下がったものの、カエルの鳴き声は毎晩よく聞こえてきます。ほらっ、今もベランダに出ると聞こえています。
 皆さん、ご存じでしたでしょうか・・・?カエルって基本的にオスが鳴くってこと。先日テレビを見ていると、専門家がそんなことを言ってました。「鳴いているのはオスなんだ」。そう思いながら聞いていると、何となく哀愁が漂っているような気がします。「オスだから哀愁・・・」というのは、先入観かもしれません。偏見かもしれません。性差別かもしれません。でも、何となくそんな感じがするのです。
 調べてみました。カエルの鳴き声には、ウィキペディア(フリー大百科事典)によると次のような種類があるようです。
求愛音 mating call
繁殖期にオスがメスを呼び、産卵を促すための鳴き声。これまで求愛音とされてきた鳴き声には、実際にはメスに対してだけではなく、他のオスに対するなわばり宣言の意味も含まれていることが多いため、最近では求愛音となわばり音を両方含んだ広告音という言葉が使われることが多い。
なわばり音 territorial call
繁殖期にオスが他のオスに対し、縄張りを宣言する鳴き声。他のオスとの距離や行動によってなわばり音を複雑に変化させる種類もある。
広告音 advertisement call
繁殖期にオスが他の個体に対し、自分の存在をアピールして、メスを引き付け、オスを排除するための鳴き声。春から夏にかけて田んぼでよく聞かれるカエルの合唱が、これにあたる。非常に近縁な種が、肉眼では見分けられないほど似通っていても、広告音が明確に違うこともある。
解除音 release call
他のオスにメスと間違われて抱接されたオスが、間違った抱接を解除させるための鳴き声。繁殖期のヒキガエルのオスを背後から軽く握ると体を震わせながら解除音を発する。
警戒音 warning call
敵が近づいたときに発する鳴き声。人影が近づき、ひと鳴きして逃げる時の声。
危険音 distress call
敵に捕まったときに発する鳴き声。蛇に巻きつかれたり、人が強く握りしめると(握り潰してしまわないように注意)、大きなわめき声をあげる。
雨鳴き rain call,shower call
低気圧が近づいたり、雨が降っているときに発する鳴き声。アマガエルが有名。

 人間が勝手に意味づけたのかもしれませんが、いろいろな種類があるのは確かな様子。不思議です・・・・

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