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対人援助のお勉強ブログ 2010年08月~11月

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2010年11月27日(日)

「愛 小山明子」
 今日は、東大阪市介護支援専門員連絡会の10周年記念行事に参加してきました。市長さんご本人がご挨拶に来られました。そのこと自体、非常に意味のあることだと感じました。

 第一部は、介護支援専門員(ケアマネジャー)、医師、介護保険事業者によるパネルディスカッション。「連携」というキーワードで、ディスカッションが行われました。まずは、主催者であり、一人のケアマネジャーであるY氏からの発題。介護保険制度が施行されこの10年、最初の頃はずいぶん混乱も見られたが、医療や地域との連携の大切さを強調されていました。
 それを受けて、介護保険事業者のM氏は、走り続けた10年を振り返り、介護保険の原点として、自立支援、尊厳の保持、利用者本位、自己決定といった基本理念を忘れてはいけない。連絡会は、ケアマネジャーの船であり、一人ひとりのケアマネジャーが悩み、相談、共有することがエネルギーになると比喩的にエールを送られていました。
 また、医師のN氏は、介護のことを理解しない医療関係者、医療のことを理解しない介護従事者がいる中、医療と介護の連携の大切さ、そのコーディネートをするケアマネジャーの存在意義を強調されていました。
 さらに、介護保険事業者のH氏は、この10年、「コムスン事件」に代表される不祥事などがあり、関係者は、法令遵守に気を取られ、果たして、利用者の立場にきっちり立ってきたのかと問題提起をされ、ケアマネジャーを中心とするチームによるサービス提供の大切さを強調されていました。
 いずれにしても、ケアマネジャーは連携の要。ケアマネジャーなくしては、介護をめぐる人々の暮らしを支えることはできない。市民の最も身近な存在として、しんどい気持ち、葛藤を抱え矛盾する気持ちを気兼ねなく相談できる相談相手として、ケアマネジャーは存在する。市民に寄り添い、そして、それをチームの専門職に伝える。そして、チームでサービスが提供できるようにコーディネートする。今後、状況に応じて制度はどんどん変わるでしょう。しかし、変わってはいけないものがある。それは、市民の側に立ち、一人ひとりの思いに沿った暮らしを営むことができるように全力を注ぐこと。それを確認するパネルディスカッションだったように思います。

 第二部は、女優小山明子さんの講演。小山さんは、世界的な映画監督大島渚さんの奥様。大島さんは、14年前に脳出血で倒れた。その後映画制作に復帰はしたものの、肺炎や糖尿病、十二指腸潰瘍などを繰り返し、現在も闘病生活を送られている。この14年間、大島さんを支え続けてきたのが妻である小山さん。当時、介護保険制度もなく、家政婦協会に相談をされた。女優であったため、家事や夫の食事世話など十分にできない。そんな自分が情けないと振り返られた。
 小山さんの一言一言には、夫である大島さんへの愛情が痛いほど感じ取られた。こんなにも愛情を注げるものなのか。でもそれは、病床の大島さんが小山さんを支えてきたからなのだろうと感じた。大島さんは、「ありがとう」といつもおっしゃる。その言葉を聞くとこの人のために何かをしたくなる。そんな相乗作用により、大島さんと小山さんは、支え合って苦難を乗り越えてこられた。そう感じました。
 みんな、誰かの「おかげ」で生きている。それを感謝の気持ちとして表現できたら、お互い支え合い高め合うことができる。何かにつまづいたら、つい人のせいにしたくなる。「栄光を奪ったお前が悪い」。しかし、よく考えると、栄光はいつか過去になる。過去は過去として大切にしながら、いかにこれからの人生を考えることができるか、それが大切なんじゃないか。それを感じさせてくれるすばらしい講演でした。

 「愛 小山明子」と書いた色紙をいただき、にわかに小山さんのファンになったのでした(^^)
 



2010年11月22日(月)

沈黙の意味
 次のような質問が届いています。

Q、利用者さんの面談をしていて沈黙になることがよくあります。何かを話さなければいけないと思って、とりとめもない話をしてしまうことがあります。何か質問をしようかとも思うのですが、なかなかよい質問が浮かびません。本当に焦ってしまいます。沈黙になったときにはどうすればよいのでしょうか?

A、いろんな沈黙がありますよね。相手が、それまでのあなたとの会話を振り返り、何かを考えていたり次の言葉を探している沈黙。話しにくい内容なので黙り込んでしまう沈黙。お互いに何を話してよいのかわからないしらけた沈黙・・・などです。
 相手が、何かを考えていたり次の言葉を探している沈黙であるならば、邪魔をしてはいけません。少し待つようにしましょう。相手の表情や態度から、「話しにくい」という雰囲気を感じたら、「とても話しにくそうですね」と声をかけましょう。
 あたなたも相手も何を話していいかわからないしらけた沈黙はつらいですね。こんなときの沈黙の破り方として、次のようにしてみてはいかがでしょう?2つあります。1つは、沈黙の直前の話をもう一度してみること。例えば、「さっき、○○だとおっしゃってましたが、もう少し詳しく聴かせていただいていいでしょうか・・・」などと切り出してみるのです。すると、先ほどよりも詳しくさっきの話をすることができます。もう一つは、「今、何を考えてらっしゃったのですか?」と沈黙中の気持ちを聴いてみること。

 少し、観点を変えて沈黙について考えてみましょう。あなたは、気心の知れた仲のよい友だちと二人で2時間電車で旅行をするとしましょう。ずっとしゃべっているわけではないでしょう。お互いに黙っていても心地よい。「話さなくてもよい」という安心感があるのです。逆に、親しくない、どちらかというとちょっと苦手だなあと感じる上司と二人で、2時間電車で出張するとしましょう。あなたはどんな気持ちになりますか?お互い気を遣って、何かしゃべっていないことには何となく気まずい。安心して黙っていられないのです。

 本当に話を聴くのが上手な人というのは、「心地よい沈黙を与えられる人」かもしれません。あなたはどう思われますか? 



2010年11月12日(金)

私は利用者の○○さんが嫌い
 先日、次のような話がありました。
 「利用者の○○さんが嫌い」。それは絶対に言ってはいけないことだと思う。タブーです。でも、やっぱり嫌い。もう顔を見るのも嫌。
 そんな気持ちがあるので、当然○○さんとの関係がうまくいくはずがありません。仕事に行くことすら嫌になる日もあります。もう担当を変えてほしいくらいです。

 この話を聞いてボクは思いました。
 誰だって、「嫌い!」って思う相手がいる。ボクにもいます。でも、相手が利用者さんであるならば、対人援助職の当然の倫理として、そんなこと言ってはいけない。「嫌い!」と思うこと自体、情けなく感じる。確かにそうなのですが、「嫌い!」という気持ちを克服しないことには、どうにもならないのではないか。
 自分の力だけで克服できればいいけれど、なかなか難しい。だから、「あの人がどうしても嫌い」と言える仲間がほしい。そして、「嫌いと思ってしまう自分が情けない。だからどうしたらいいだろうか・・・?」そう相談できる相手がほしい。

 これは、職員集団でお互いに高め合えるピアスーパービジョンの一つのテーマになるように思います。「嫌いと言ってはいけないけど、嫌いと思ってしまう。だからどうしたらいいだろうか」というテーマで、話し合って見るということです。ただし、それは「愚痴大会」ではありません。
 日々葛藤を抱える対人援助職。葛藤を正直に出し合わないとしんどくなってしまうように思います。正直に出し合える仲間と、正直な気持ちを出し合い。それをどのように克服したらよいか、知恵を出し合ってみたらいかがでしょうね・・・・



2010年11月05日(金)

一言め、どのように問いかければよいか・・・
 次のような質問が届いています。

Q、職員に面談するときに、支援に対する思いや組織に対して感じていることを聴きたいのですが、一言めにどのように問いかければよいのでしょうか?

A、職員に面談する時間を取ってらっしゃるのですね。とてもよいことだと思います。しかし、一言めにどのように問いかければよいかと、あなた自身ずいぶん構えてらっしゃるようです。
 あなた自身が構えてしまうと、その緊張感は職員さんたちに伝わり、職員さんたちも構えてしまわれますね。本当に「関係」というのは不思議なものです。
 これは、絶対的な答えではなく、私からの提案ですが・・・・・まず、○月から順番に全職員の面談をすることを宣言して、その前に無記名で全職員にアンケートをされたらいかがでしょうか?面談の目的は、「それぞれの職員の支援に対する思いや組織に対して感じていることを知る」ということです。
 アンケートを集計し、それを全職員に返します。その上で、それを一つの資料や題材として、全職員の面談をします。
 面談の目的はすでにはっきりしていますので、あなたが「一言め、どのように問いかければよいか」という緊張感は、かなり緩和されると思います。
 一人ひとりの職員の考えていることや望んでいることを知ることは、よりよい仕事をするためにとても大切なことだと思います。また、それらを知るためには、「この職員は劣っているから、あるべき姿を教えてやろう」といった「下心」をもたないで、純粋に思いを聴くことが大切だと思います。



2010年10月29日(金)

私はリーダーなんかになりたくない
 次のような質問が届いています。

Q、今の施設に就職して5年。上司は「リーダーになる努力をしなさい」と、ことあるごとに言います。私はそれがとても負担です。面と向かって断れなくて、一応頑張ろうとするのですが、本当は、私は、リーダーになんかなりたくありません。そんな気持ちが大きくて、もう仕事を辞めたくなります。この悪循環をどうしたら抜け出すことができるでしょうか?

A、ずいぶん負担に感じているのですね。上司は期待を寄せてくれているし、面と向かって断れない・・・・上司から、期待されていると感じると葛藤が大きくなるのでしょう。つらいところです。
 ところで、あなたは、どうしてリーダーになりたくないのでしょうか・・・?今までに、何か嫌なことを見てきたのでしょうか?自分はそんな器じゃないと思っているのでしょうか?いずれにしても何か引っかかりがあるのですね。
 その引っかかりを整理したいものです。あなたが信頼している人に、あなたの気持ちをよく聴いてもらってください。「アドバイスはいらないから、私がどんな気持ちなのかをはっきりさせるために、いっぱい質問してください」と頼んで、聴いてもらってください。あなたがいっぱい気持ちを表現できたら、あなた自身、何かに気づくかもしれません。そうすると、何か突破口が見つかると思いますよ。



2010年10月19日(火)

勉強しないで成り立つ専門職はない
 この頃、僕が担当する研修の主催者が、よくぼやいています。「福祉職、介護職は勉強したがらない・・・・」とのことです。
 確かにそういう傾向はあるように思います。ただ、この傾向は今に始まったことではない。ボクが現場で仕事をしていたときも、そんな傾向はあったように思います。現に、ボク自身、現場を辞めて大学院に進学したとき、指導教授から言われました。「植田くんは、福祉のことをわかっていない」。
 13年間も現場で仕事をしてきたのに、そう言われたのです。ショックでした。でも、確かにわかってなかったのです。授業で自分がしてきた仕事の説明をしようとしても全く理論的ではない。経験談はいくらでも話せるけれど、理論と結びつけて話ができないのです。なぜなら、理論を知らないからでした。
 愕然としました。それから、がむしゃらに勉強しました。やっと「福祉のことをわかってきたね」と指導教授に認められたのは、1年半後でした。ようやく論文も書けるようになりました。
 そんな自分のことを棚に上げて言わせていただくと、「福祉職、介護職は専門職なのです」。勉強しないで成り立つ専門職などあり得ません。だから勉強してほしいのです。研修、本を読む、同僚たちと勉強会をする・・・・などがいいでしょうね。
 職場から行かせてもらえる研修は、年に一回あるかないかでしょう。たまにでいいので、自分のお金と自分の休みを使って研修に出かけてみましょう。少々高額ですが、民間の団体などが研修をやっています。
 本も読みましょう。読書は苦手だ・・・そういう方がなぜか多いです。そんな方は、まず、難しい理論書は敬遠しても構いません。実践に即役に立つ実践書も多く出版されています。大きな本屋さんで立ち読みし、これは読めそうだなと思う本を買ってみてください。そして、お気に入りの本を作るのです。それを何回も読む。読むたびに新しい発見があります。
 また、同僚や仲間で勉強会をする。これは、今まで何度か紹介してきたピアスーパービジョンです。時には飲み会もし、仲間意識も養いつつ、細く長く勉強会をする。

 専門職である以上、勉強してください。



2010年10月09日(土)

学会での発表
 今日明日は、日本社会福祉学会。今年も発表します。とはいっても、ボクが発表するのではなく、発表はメインの研究者であるS先生。ボクはサブです。
 テーマは、「わが国におけるピア・グループ・スーパービジョン実践について考える ~文化的視点からの問題提示~」。現在、日本で行われているスーパービジョンの理論的基盤は欧米発のもの。しかし、「ピア・グループ・スーパービジョン」の場合特に、日本人の文化的特性を考えると、欧米の理論に沿うことには無理があるのではないか。
 ピア(peer)とは、「地位の等しい人、同等、対等者、同僚、仲間」だが、日本人の場合、「ミウチ意識が根付き、気心が知れている集団」、「companion」に近いのではないかと思われる。「感覚的なつながり」を大切にし、その関係は、飲み会などのプライベートな集まりなどで基盤が作られる。自ずと、馴染めない人はその集団から離れ、元の集団のメンバーは、離れていった人のことをヨソモノとして無意識的に排除する。
 また、日本人の場合、仲間と感じた相手を思いやる姿勢が身についている。しかし、それは欧米の理論でいう「支持的」とはいい難い。
 そうした日本人の文化的特性、特に日本人の「仲間意識」を踏まえた上で、ピア・グループ・スーパービジョンを理解する必要があるのではないか・・・といった内容です。われながらなかなかおもしろいなあと思っています。S先生の功績ですが(^^)



2010年10月02日(土)

異職種間でスーパービジョンは成り立つか
 次のような質問が届いています。

Q、私は、社会福祉士有資格者で老人施設の主任をしています。私の部下には看護師も位置づけられているのですが、私は看護師のスーパービジョンをすることができるのでしょうか?

A、社会福祉施設に行くと、違う職種の部下がいる状況というのはよくあることです。
 スーパービジョンを狭く捉えると、「専門職を育てる」という教育的な側面が強調されることになります。いかに上司といえども社会福祉士が看護師の専門性を高めるための教育をすることはできません。全く専門性が違いますので当然のことです。ですから、狭義のスーパービジョンでは、異職種間でのスーパービジョンは成り立ちません。
 しかし、スーパービジョンには、支持的な側面や管理的な側面もあります。あなたは、社会福祉士として、部下である看護師を支えることはできます。むしろ、それはあなたの専門領域です。また、あなたは看護師の上司ですので、看護師の業務に責任を負います。看護師が働きやすいように、能力を発揮しやすいように、環境を整えなければいけません。さらには、嘱託かも知れませんが、必ず医師が施設に配置されていると思いますので、医師とよく相談の上、看護師の業務がどうしたらうまく遂行できるかを管理する必要もあります。



2010年09月22日(水)

相手との間にある空気
 次のような質問が届いています。

Q、話すのが苦手だといって、何も話してくれない職員がいます。あきらかにしんどそうだし、力になりたいのですが、まったく話そうとしてくれません。どのように対応すればよいのでしょうか?

A、人はそもそも「聴く」よりも「話す」方が好きなのです。でも、ときどき「話すことは苦手、聴いてる方が楽でいい」という人がおられます。では、なぜ、「話すことが苦手」だと思うのでしょうか?
 ほとんどの場合、「うまくしゃべらなければいけない」「こんなこと言ったら笑われるんじゃないか」「馬鹿にされるんじゃないか」「怒られるんじゃないか」といった心配をしています。もし、「この人になら、うまくしゃべらなくても大丈夫」「この人は私のことを笑わない」「この人は私のことを馬鹿にしない」「この人は私を怒らない」といった安心感があったらどうでしょう。ほとんどの人はいくらでも話せると思います。
 何も話してくれないのは、相手が、話すことができない空気を感じ取っている可能性が高いのではないかと思います。今一度、相手との間にある空気について考えてみませんか?



2010年09月15日(水)

理論を学ぶということ
 次のような質問が届いています。

Q、理論を学習することは本当に大切なのでしょうか?学生時代に学びましたが、全く覚えていません。もう10年以上も社会福祉の仕事をしていますが、理論を勉強しないでもやってこれました。たまに本を読んでも、難しいという印象をもつだけで、役に立つとは思えません。

A、対人援助の理論というのは、実践を積み上げて構築されたものなのです。決して理論が先にあったわけではありません。ですから、どの理論を取り上げても「なるほど」と思えます。ただ、理論書というのは、抽象的に書かれてあるものが多く、また難しい表現で書かれたものが多く、読んでもよくわからない。だからつい敬遠したくなるのです。
 理論を具体的に実践場面に即した言葉で学ぶことができると、本当によくわかると思います。なぜなら、日頃からあなたが実践していることだからです。
 あなたの実践を理論的に説明できると、いろいろな場面で役に立ちます。例えば、他人に自分の仕事を説明するときです。後輩や部下、他の専門職、それに他の業界の人たちに対しても、説明しやすくなります。そして、理解してもらいやすい。また、理論を知っていると、他の専門職との違いを明確にすることができます。
 「対人援助の仕事なんて資格がなくても誰でもできるじゃないか」本音としてそう思っている人たちは多いかもしれません。でも、理論を理解すると、それは間違いだと思えるようになります。
 専門職の世界共通の言語、それが理論なのです。具体的に学習して、「私はこの理論を実践している専門家なんだ」と自信をもちたいものです。



2010年09月09日(木)

自分の裁量でできること
 次のような質問が届いています。

Q、私は、スーパービジョンの必要性を感じているのですが、管理者がスーパービジョンについて全く理解がなく、実施できません。どのようにすればよいでしょうか?

A、管理者に理解してもらい、組織としてスーパービジョンを行うことは大切です。ですから、粘り強く必要性を説明してほしいと思います。その際に、組織としてどのように体制を整えたらよいのか、あなたが描くイメージを具体的に文章化したり、図式化すれば説明しやすいと思います。
 しかし、あなたの裁量でもできることがあると思います。目の前にいる後輩や新人さんへの声かけの中味まで組織は管理していません。あなたの裁量に任されています。職員さんへの日常的な声かけやかかわりをスーパービジョンだとあなたの気持ちの中で位置づけてみましょう。



2010年09月07日(火)

伝達研修
 暑~い暑~い夏も終わりを告げようとしています。この夏も、講演や研修であちこち行きましたが、出張先で体調が悪くなり、2度の点滴。こんな夏は初めてでした。暑すぎた・・・のもあるのでしょうが、歳とったなあというのも実感です。
 今日は熊本にいます。熊本の「スーパーバイザー養成研修」はなんと9年目。こりもせず、こんなボクを9年も続けて雇ってくださいました。主催者には感謝です。
 9年目か・・・・そう思ったとき、歳とったなあと感じたのでした。

 さて、ボクの研修を受けてくださった方から、質問が届いています。

Q、スーパービジョンを組織として認識してもらうためには、どうすればよいのでしょうか?

A、スーパーバイザー養成研修を受けた伝達研修はできないでしょうか?養成研修の雰囲気をあなたの職場の職員さんに伝えるのです。雰囲気だけではありません。学んだ理論も伝える。職員さんや管理者の方々が、スーパービジョンの必要性を認識してくださったら大成功です。スーパーバイザーの担い手がいなくても、仲間で高め合うことを考えるきっかけになると思います。
 また、伝達研修の講師をするということは、相当勉強しなくてはいけない。それがいいのです。ボクも、初めてやる講義なんかは、90分しようと思えば、2時間ぐらいかけて予習をします。そうすることで、自分のものになるのです。自分磨くためにも、スーパービジョンを浸透させるためにも、伝達研修はすごく有効だと思います。



2010年08月28日(土)

地方での研修
 今日は、和歌山県の新宮で研修をしてきました。隣の県ですが、奈良から5時間かかりました。主催者が言うことには、不便なところがゆえ、外から講師を呼ぶことはほとんどないということでした。
 研修の内容は、「援助者の態度と話を聴く技法を学ぶ~対人援助の原点と本質から~」というものでした。受講された皆さんは、よい表情で研修を終えることができました。
 そもそも対人援助とは、援助する人とされる人の支え合い。だから、両者の関係を考えることが大切。どうしたらよい関係を作ることができるのか・・・・そんな話をしてきました。
 今日思ったのは、これからどんどん地方で講演や研修をしたいなということ。外から講師を呼ぶ機会が少ないところにどんどん行きたいなあ、そう思いました。



2010年08月23日(月)

気づきを促すことと、あるべき姿を伝えること
 次のような研修の感想をいただいています。

 日頃の忙しい業務の中で、職員が相談に来ても、話を十分聴く前にアドバイスをしてしまったり、答えを言ってしまったりすることが多く、職員の気づきの芽を摘んでしまっているのではないかと感じました。

コメント:
 忙しいと、つい話を聴きもしないでアドバイスをしたり、答えを言ったりしてしまいますよね。職員を育てるということを考えれば、少しづつでも改善していきましょう。忙しいときほど、意識をして話を聴いたり、気づきを促したりしないと、ついついやっちゃいます。
 ただ、気づきを促すといっても、やはりあるべき姿をきちんと伝えることが必要なときもあると思います。気づくことができない職員さんもおられるし、気づくことにすごく時間がかかる職員さんもおられます。ですから、話を十分聴かないで、答えを言ってしまうのはよくありませんが、十分聴いた上で、あるべき姿を伝えることも大切です。
 ただし、伝え方が問われてきます。見下げたような、突き放したような言い方をすれば、相手の職員さんは嫌な気持ちになります。伝え方に十分留意し、具体的にわかるように伝えてあげてください。



2010年08月20日(金)
聴き上手になるために
 今日は、奈良市社会福祉協議会主催のサロン活動実践者研修会をしてきました。活動の担い手はボランティアさん。3日間に渡る研修の初日でした。今日のテーマは、「聴き上手は話し上手!会話でつながる人と地域」。なかなかうまく考えられたキャッチフレーズです。
 要するに今日はコミュニケーションについて勉強されました。前半は、コミュニケーションは非言語が大切だという講義をして、相手との位置関係、距離について演習をしました。
 後半は、聴き上手になるための技法、コミュニケーションのパターン、そしてポイントについて講義をした上で、ロールプレイをやりました。
 締めくくりとして、私が受講された皆さんにお伝えしたのは、「聴き上手になるためには、自分の気持ちや経験を話さないで、しっかり相手の話を聴くこと」ということ。人間は根本的に聴くよりも話す方が好きなんですよね。何も意識しなければ、つい自分の気持ちや経験を相手に聞かせようとしてしまう。だから、「自分のことを話さない」ということに十分気をつけることが、聴き上手になる大きなポイントだと思います。
 今日の受講者さんたちは、プロではなくボランティアさん。でも、人の話を聴くための基本はプロと同じ。
 話を聴く練習は、いつでもどこでもできるので、今日勉強したことを意識しながら練習したらよいと思います。また、コミュニケーション技法や面接技法の本はたくさん出ていますので、本屋さんで、わかりやすそうなものを選んで、読みながら練習したらよいと思います。



2010年08月17日(火)

どうして投げやりになるのでしょうか?
 次のような質問が届いています。

Q、どうしてもやる気が出ないで投げやりな意見を出す。定年を目の前にした職員にどう対応したらよいのでしょうか?

A、投げやりなことばかり言うのを聞くとうんざりしますね。腹が立ってきます。そうするとますますその職員の存在自体が嫌になってきます。定年間際だから、もう少し辛抱したら・・・なんてことも考えるのでしょう。
 さて、その職員さんは、どうしてやる気が出ないのでしょう。自然にそうなったわけではないでしょう。何か理由があるはずです。何かきっかけがあって、それに拍車がかかって来たのではないでしょうか?その理由の背景は複雑で、本人も整理できていないかもしれません。
 定年間際だということは、あなたよりも年上なのでしょう。そのあたりに気をつけながら、その職員さんの仕事人生について、一度ゆっくり話を聴いてみたらいかがでしょう。どのような思いでどのような仕事をし、どのようなことがあったからどのような気持ちになったのか。そしてどのように対処してきたのか・・・あなたも将来陥るかもしれない話を聴くことができるかもしれません。
 どのように対応するかはそれからの課題です。対応するにも、理由や背景をその職員さんの側から聴くことが先決のような気がします。



2010年08月14日(土)

上下があっても仲間
 次のような質問が届いています。

Q、スーパーバイザーが混乱し、悩んだときはどのようにしたらよいのでしょうか?

A、スーパーバイザーも混乱し、悩みますよね。当然のことですので安心してください。そんなときは、誰かに相談しましょう。上司、先輩、同僚、場合によっては部下や後輩に相談するということがあってもいいと思います。また、他の組織の同じような立場の人に相談するのもよいと思います。そのためには、日頃から相談できる相手を作っておくことが大切になります。上司や先輩には、日頃から上手に甘えてみてください。部下や後輩にも弱みを見せることができる関係を築きましょう。他の組織の人たちとは、地域のネットワークの中で、あるいは、研修を受けた際に名刺交換し、日頃からメール等でやりとりする中で、つながっておきましょう。それは、何かあったときに自分を守ることにもなります。
 ところで、今、「踊る大捜査線」という映画が上映されていますよね。ご覧になりましたでしょうか?織田裕二さん扮する青島刑事はこの度係長になりました。青島刑事の台詞に次のようなものがあります。
「俺に部下はいない。いるのは仲間だけだ!」
 係長になったのですから当然部下はいます。実際には部下はいるのだけれども、このような台詞を言っているのです。実際に組織上、上下関係があったとしても、それを感じない仲間意識をもつことはとても大切だと思います。ときには、部下に弱音も聴いてもらいたい。対等に一緒に困難に立ち向かいたい。そうした関係作りができたら、組織の至る所で、また地域のネットワークの中で、支え合いや高め合いが行われるように思います。それがスーパービジョン体制を築く基本なのかもしれません。



2010年08月12日(木)

スーパーバイザーの資格
 次のような質問が届いています。

Q、スーパーバイザーになり得る人とは、勤務年数等だいたいの目安があるのでしょうか?兼務というのもありますか?

A、日本がスーパービジョンを輸入した先であるアメリカのある州の場合、現場でのソーシャルワーク経験が10年以上、そして大学院(修士課程)を出ていること、という資格を設定していました。給料も高いです。
 しかし、日本の場合、そんな求人広告を出せない現状があります。スーパーバイザーという職種自体、一般的ではありません。給料を高く設定できない状況もあります。要するに、「スーパービジョン」自体、業務として浸透していないのです。
 ですから、少し年上、あるいは経験が豊かな先輩が後進を育成するエルダー制度、また、マンツーマンで指導をするチューター制度などを取り入れ、それを組織の仕組みとして機能させることが大切かと思います。
 また、仲間同士でもお互いに支え合ったり高め合ったりということも、組織ぐるみで取り組めばいいと思います。
 そうした仕組み作りをすることによって、体系的な教育を受けたスーパーバイザーが育っていない状況でも、スーパービジョンが機能すると思います。ただし、少しづつでもよいので、それが「スーパービジョン」であると意識することができるように、みんながスーパービジョンについて理解してほしいものです。 



2010年08月08日(日)

スーパービジョンの仕掛け人になる
 次のようなご質問が届いています。

Q、スーパービジョン研修を受け、スーパービジョンの必要性を強く感じました。私は、経験5年目、22歳のサブリーダーです。上司に取り組んでほしいと訴えたいのですが、私の立場で訴えても大丈夫でしょうか・・・?

A、訴えても大丈夫ですよ。ただし、訴え方によっては、全く話を聴いていただけないかもしれません。研修を受けて、「このように感じました」と説明するという感じの方がよいかもしれません。そのときに、いろいろな次元で、どのようなスーパービジョンが可能なのかを具体的にイメージをし、紙に書いて整理してみてください。そうすると説明しやすくなります。いろいろな次元とは、例えば、①あなたの裁量でできること、②あなたの直属の上司(リーダーあるいは主任)と相談することで可能なこと、③施設長あるいは管理者に承認してもらわないとできないこと、などです。
 あなたの裁量でできることは、構想が固まったらすぐに始めましょう。どんなことが考えられるでしょうか・・・例えば、あなたの部下や後輩の勤務が終わったら、「お疲れさま!今日の仕事はどうだった?」と声をかけてあげたらいかがでしょう。一日数分、何かがあった日でもなかった日でもです。もし何か困難なことに直面していたら、改めて時間をとって話を聴いたらいいのです。また、あなたも含めて、一緒に勉強する機会を作ってみてはいかがでしょう。あなたは、その仕掛け人になるのです。



2010年08月06日(土)

保育でのスーパービジョン
 昨日、長崎県保育協会の主任保育士研修会にお招きいただきました。4時間、スーパービジョンについての研修をしてきました。
 保育の分野には、スーパービジョンはほとんど浸透していないのが現状でしょう。10年前の福祉分野のようです。
 主任保育士さんは、園長先生の次の人。保育士さんたちの指導や業務の調整をするのでしょうが、まさしくスーパーバイザーなんですね。「スーパービジョン」という言葉が浸透していなくとも、今までずっとスーパービジョンをしていたのです。保育士さんたちが困っていたら相談にも乗ったでしょうし、助言もしたでしょう。経験の浅い保育士さんを育てようとしていたでしょう。会議をするときには、少しでも業務が円滑に行われるように、また、少しでも質の高い保育ができるようにと考えながら進めていたでしょう。それがスーパービジョンなのです。無意識のうちにスーパービジョンをしているのです。それが仕事ですから・・・・
 スーパービジョンをしているのであれば、その理論を体系的に学ぶと役に立ちますよね。これから、どんどん研修が増えることを願っています。



2010年08月01日(日)

全体を眺める(2)
 全体を眺めるとは、あなた自身も含めた全体を眺めるということなのです。あなたは、クライエントや家族、それにチームの他のスタッフたちにどのような影響を及ぼしているのかも含めて全体を眺めるということなのです。
 また、クライエントを中心に関係者がどのようなつながりをもっているのか・・・あなたも関係者の一人である以上、クライエントに影響を及ぼす人なのです。
 クライエントが気になって仕方がない。放っておけないといった気持ちになると、クライエントを客観的に眺めることが難しい。でも、他のスタッフとの関係も含めて自分がどのような位置にいるのか、どのような影響を及ぼしているのか、を眺めることはできるのです。そんなに難しいことではありません。
 エコマップという図をご存じでしょうか・・・?線の種類と太さによって、関係者の関係を表現する図なのです。これを書いてみると、かなり自分の存在が客観的に見え、全体を見ることができるようになります。


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